2012年12月18日(火)

2012-12-18 17:36
426 夕方の駅前で[]




世界のすべてが羨ましくて、また同時に憎たらしかった。
俺はいつものように意味もなく街を彷徨い歩き、通りすがる人々の顔や身なりを眺めては心の中で蔑んでいた。
暖かそうなマフラーとコートに身を包み、仲良く手を組み合う高校生カップル。スーツとネクタイを着込み、忙しそうに携帯片手に商談しているサラリーマン。友達同士できゃっきゃと笑いあう小学生。
全てが敵に見えた。本当は誰も俺のことなんて眼中にない。そんなことはわかっている。理解していながら、心を閉ざし、目に映る全てのものを恨まなければやっていけなかった。
夕方の駅は混雑している。
仕事帰り、学校帰りの者や、それ以外の者たちでごった返しでいる。
死んでしまおうか。
時々思う。
重い足取りで歩いていると、人の影から現れたおばあさんにぶつかりそうになった。
「ちっ」
舌を鳴らしたのは、随分とみすぼらしい格好をしたおばあさんの方だった。
頭が真っ白で、肌はどこか黒っぽく、体は骨のように細い。
こんな奴でも舌打ちをするのかと思うと、俺は俄然勇気が湧いてきた。
もっと堂々していればいい。もっと開き直ればいい。
そう言われているような気がして、元気になってきた。
「所詮、人生はそんなもんなんだな」
俺はズボンのポケットからiPhoneを取り出し、開いた。
液晶画面には着信を示すメッセージと、20という件数が表示されていた。
全て、バイト先の店長からだった。
俺はその番号を拒否するよう設定し、口笛を吹きながら電車に乗った。

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