2013年02月08日(金)

2013-02-08 14:33
無題[]
生徒会室を前にして、僕は冷や汗をかいた。なんて言って部活を申請しようか。ふざけた部活だと笑われないだろうか。不安になった。
だけど僕はすぐ前の世界を思い返した。
あの頃はよく夢を見た。就職面接で落とされて、履歴書で人格否定されて、ぼろぼろの精神で布団に入り抱き枕に顔をうずめながら夢を見た。
夢の中でも僕は高校生だった。担任の教師からチョーク箱を取りにいくよう言われたり、窓から射し込む午後の陽光に目を細めながら気だるい授業を受けたりした。幸せだった。退屈な日常が実は幸せなことだったんだって、終わってから気付いたんだ。
夢の中で僕はよく手をつねった。その度痛みがなくって、これは夢なんだって自覚したよ。少しでも長くぬるま湯に浸かっていたいと願った。だけど現実は非情なもので、夢を見続けたいと思うと必ずアラームが鳴るんだ。刹那で現実に返り咲きさ。
泣きたくなった。だけど涙は出なかった。まるで石像にでもなったかのようだった。
でも今は違う。唇を噛み締めれば痛覚だってある。現実だ。
叶ったんだ、願いが。あの頃の不安や絶望に比べたら、生徒会室に乗り込むなんて屁の河童さ。
僕は高まる鼓動を感じながら、生徒会室の扉を二回ノックした。
「どうぞ」
男の声がした。
僕は扉を開ける。こじんまりした部屋には細長いテーブルと、八つのパイプ椅子が向かい合う形で設置されている。その一角に、学ランとメガネの似合う少年が座っている。少年はいかにも優等生らしい雰囲気を放ち、レンズの奥の瞳を僕に向ける。
「あの、部活申請したいんですけど」
「ちょっと待ってね」
部屋の奥には小さな木の棚がある。少年はそこから一枚の紙を取り出し、僕に渡した。
「ここに部活名とメンバー、顧問の名前を書いてくれ。メンバーは三人以上なんだけど、その点は大丈夫そうだね」
僕の背後に立つ仲間たちを見て、言う。
「あ、あの、顧問はまだ見つかってないんですけど」
「それじゃあ申請は許可出来ないな。紙はあげるから、顧問をゲットしてからまた来てくれ」
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